EVの普及が進む中、自宅や事業所に充電器の設置を検討する方も増えています。そんなときに多くの方が検討するのが、充電器設置に対する補助金制度です。補助金を活用すれば、設置コストを抑えられ、魅力的に映るかもしれません。しかし、「補助金ありき」で計画を進めるのは要注意です。今回は、EV充電器補助金の問題点について解説します。
補助金申請のプロセスと工事のタイミング
EV充電器補助金を利用すれば、充電インフラの導入コストを大幅に軽減できるため、多くの人や企業にとって魅力的な支援制度です。しかし、利用する際に把握しておかなければならない、補助金申請のプロセスがあります。
国の補助金を申請する場合は、交付申請書類を提出し、審査・交付決定通知を受けます。そして設置工事を開始し、設置工事終了後に実績報告書を提出し、補助金額確定通知を受け取りましょう。
その後、補助金交付・振り込みというのが一連の流れです。そして、EV充電器補助金を利用する際に最も注意が必要なのが、工事のタイミングです。多くの補助金制度では、補助金申請が受理され、交付決定通知を受け取った後でなければ設置工事を開始してはいけないというルールがあります。
もし交付決定前に工事を始めてしまうと、補助金が無効になってしまうリスクがあります。「EVの購入と同時に充電器を早く設置したい」という気持ちは理解できますが、焦って工事を進めると後で補助金が受け取れず、結果的に予算を超えてしまう可能性があります。
補助金の交付決定通知が届くまで、絶対に工事を開始しないという鉄則を守ることが求められます。さらに、補助金申請には一定の審査期間がかかるため、申請から交付決定までに数週間から数カ月かかることがあります。急いで充電器を設置したい場合でも、補助金の手続きをしっかり踏まなくてはなりません。
申請時における書類提出の厳格なルール
EV充電器補助金の申請プロセスでは、書類提出に関する厳格なルールが設けられています。補助対象となるのはEV充電器の設置場所ごとに定められた要件に合致した申請のみに限られ、受付はほとんどの場合において先着順となります。
受付期間内であっても、補助金の予算額に達すると募集が締め切られてしまうことに注意しましょう。また、申請書に加えて工事に関連する見積書や契約書、さらには充電器の仕様書など、さまざまな書類が必要になります。
特に提出期限や記載内容に不備があった場合、補助金が却下されるリスクが高まります。書類の不備によって、補助金が受け取れないケースも少なくありません。申請書類は非常に細かいところまで確認されるため、ミスや抜けがないように十分に注意しましょう。
また、補助金申請後も実績報告の提出が必要です。工事が完了した後に期日内に適切な書類を揃えて実績報告する必要があり、これを怠ると補助金を受け取れない可能性が高くなります。
書類の提出期限が厳しく設定されていることが多いため、工事スケジュールや納品のタイミングをしっかり管理することが求められるでしょう。
また2024年の第2期から、工事終了から実績報告までの猶予が、3か月以上から1か月半に短縮されています。機器の納品に時間がかかる場合は、実績報告完了までのスケジュールを考慮して工事計画を立てなくてはなりません。
補助金に頼りすぎることのリスクと注意喚起
EV充電器の導入を検討している多くの方は、補助金による費用軽減を期待しているかもしれません。しかし、補助金に過度に依存することはリスクを伴います。
代表的なリスクのひとつが「予算の超過リスク」です。EV充填機の導入に際して、補助金が必ず交付されるわけではありません。予算枠が限られている場合、申請が多ければ補助金が受け取れない可能性があります。
また、申請が却下された場合は全額自己負担となるため、予想外の出費に悩まされることになります。補助金が受け取れなかった場合にも対応できるよう、あらかじめ十分な予算を確保しておくことが大切です。
他にもありがちなリスクが「スケジュールの遅延」です。補助金は、交付決定までに時間がかかることもあります。補助金申請を待っている間に、充電器の設置やEVの利用を遅らせるのは非効率です。
そのため、補助金ありきで計画を立てず、補助金がない場合でも問題なく進められるように準備を進めることが重要になります。特に、補助金が受け取れなくても無理なく充電器を設置できるように、予算計画をしっかりと立てましょう。
充電器の費用は、長期的にはEVの燃料コスト削減に寄与するため、補助金がなくても、コスト効果は大きいものです。
まとめ
EV充電器の補助金は、経済的な負担を軽減する大きな助けとなりますが、補助金制度に依存しすぎると、さまざまなリスクが生じることがあります。申請プロセスの厳格なルールやタイミング、書類不備のリスク、そして補助金が受け取れなかった場合の予算超過など、慎重に計画を立てることが重要です。補助金を受け取れなくても無理のない予算計画を立て、スムーズにEV充電器を導入できるように準備することが大切です。補助金はあくまで「補助」と考えましょう。万が一補助金が受け取れなくても問題なく計画を進められるようにすることで、安心してEVライフを楽しめるでしょう。