EV導入は、ランニングコストの削減や環境貢献、社会的イメージ向上などさまざまな分野で好影響が期待できます。その運用方法を工夫することで、導入者にとってさらなるメリットが期待できます。この記事で紹介するピークシフトを採り入れることで、電気料金の削減や電力供給の安定化、環境負荷の軽減といった多くの利益を得られます。
ピークシフトの基本概要
ピークシフトは、電気を使う時間帯を変えることで電力需要の高い時間帯を避け、電力使用量を平準化する方法のことを指します。EVの充電においては、電力が安く、電力需要が少ない時間帯(夜間など)に充電することで電力消費のピークを避け、効率的に電力を使えます。
たとえば、家庭や事業所が日中に大量の電力を使うと、地域全体での電力消費量がピークに達して電力供給に負荷がかかるからです。ピークシフトを実践すれば、電力消費を少ない時間帯に移すことで、電力需要のバランスが取れます。
さらに、電力供給の安定化に貢献できます。また、多くの電力会社では、時間帯によって電気料金が異なる時間帯別料金プランを提供可能です。たとえば、昼間の電力需要が高い時間帯には料金が高く設定され、夜間や早朝の電力需要が少ない時間帯には、割安な料金が適用されます。
EVの充電をこの安い時間帯に集中させることで、電気料金を大幅に削減できることは、EV利用者にとって大きなメリットです。具体例として、夜間の料金が日中の約半分に設定されている場合、1回のフル充電でかかるコストを大きく減らせます。
特に、バッテリー容量の大きいEVを所有している場合や毎日充電が必要な場合、このような料金プランの活用は非常に高い経済的な効果が期待できるでしょう。
ピークカットとは何か?
ピークカットは、電力消費のピークタイムにおける使用量そのものを削減することです。つまり、ピークシフトが時間帯を変更するのに対し、ピークカットは電力消費そのものを減らすことを目的としています。
EV充電の場面では、充電を短時間で済ませたり、高速充電を使わずにゆっくりと充電したりすることで、電力のピーク時に大きな電力を使わないようにすることが挙げられます。
ピークシフトとピークカットの違いとメリット
ピークシフトは、電力消費を他の時間帯に移すことで、電力の需要が集中するピークタイムを避けることです。一方ピークカットは、ピークタイムにおける電力使用そのものを削減することです。
この2つの方法の違いは、時間帯をずらすか、消費量を減らすかにあります。ピークシフトを導入することで得られる大きなメリットのひとつは、電気代の削減です。多くの電力会社は、夜間の電力料金を割安に設定しています。
そのため、ピークシフトによって夜間にEVを充電すれば、コストを抑えることが可能です。また、電力消費が集中するピークタイムを避けることで、電力会社への負荷を軽減し、供給の安定に貢献できます。
再生可能エネルギーが増える中ピークシフトを活用することで、電力網への負荷が少なくなり、効率的にエネルギーが使用できます。一方で、ピークカットのメリットとして挙げられるのは、電力契約の基本料金削減です。
事業所や家庭の契約電力の上限(ピーク)を下げて、契約に応じた基本料金を抑えることが可能です。また、ピークカットでも、電力網への負担軽減の効果があります。消費量そのものを減らすことで、ピークタイムに過負荷がかかることを防げます。
EV充電においてピークシフトを賢く活用するためには、充電時間の工夫やエネルギー管理の最適化が鍵です。企業や個人が導入しやすい具体的なアイデアとして、タイマー機能の活用や、時間帯別料金プランを活用すること、デマンドレスポンス(DR)を活用することなどが挙げられます。
タイマー機能の活用は、EVの充電器や車自体にタイマー機能が付いている場合、それを設定して深夜の電力料金が安い時間に自動的に充電をおこなう際に有効です。電力会社によっては時間帯別料金プランを提供している場合は、これを活用することでさらなるコスト削減が可能となるでしょう。
デマンドレスポンスは、電力会社からの需要シグナルに応じて電力消費を調整する仕組みです。EV充電にデマンドレスポンスを組み合わせることで、電力会社がピークシフトを推奨するタイミングに従って充電できます。
デマンドレスポンスのメリットは、導入することにより、追加のインセンティブや割引が提供される場合があることです。デマンドレスポンスに対応したスマート充電器を使うことで電力需要が低い時間帯に自動的に充電できるため、経済的かつ地域のエネルギー最適化への貢献も実現できます。
まとめ
ピークシフトは、EV充電を夜間など電力需要が低い時間帯に移すことで、電気代の節約と電力供給の安定に役立ちます。一方ピークカットは、ピークタイムでの電力消費そのものを抑える方法です。どちらも電力使用の効率化やコスト削減に貢献し、持続可能なエネルギー利用をサポートする重要な手段です。EV充電システムを導入する際には、これらの方法をうまく活用して、電力管理を最適化することが重要です。特に、日常的にEVを使用している方や、電力消費の多い企業、時間帯別料金プランを利用している家庭では、ピークシフトを効果的に活用することが大きなコスト削減につながるでしょう。