電気自動車(EV:Electric Vehicle)は、ガソリンやディーゼルエンジンの代わりに、電気モーターで駆動する自動車です。主なエネルギー源はバッテリーで、外部から電力を充電して走行するため、EV導入の際は充電に関する知識が求められます。この記事では電気自動車の充電時間にスポットをあてて、詳しく解説します。
EV充電にかかる時間の概要
「時間がかかる」という印象のある電気自動車の充電ですが、実際にどれくらいの時間がかかるかは充電方法やバッテリー容量によって異なります。EV充電は主に普通充電(レベル1とレベル2)と急速充電(レベル3)に分かれ、それぞれの充電速度によってかかる時間が大きく変わることが特徴です。
大まかな充電時間(h)は、充電量(kWh)÷充電器の出力(kW)の計算式で求められます。レベル1の普通充電(100V、約1.5kW)の場合、1時間あたりで約4~6kmの走行距離分を充電可能です。
40~50kWhのバッテリーをもつEV車の場合、フル充電には約20~40時間かかります。レベル2の普通充電(200V、約3~6kW)の場合、レベル1に比べて充電速度が大幅に向上し、1時間あたりで約15~40kmの走行距離分を充電可能です。
40kWhのバッテリーをもつEV車であれば、フル充電は約6~12時間で済みます。急速充電(400~800V程度、約20~150kW)は、公共の急速充電ステーションで利用され、短時間で充電できるのが特徴です。
特に長距離移動中の充電に適していますが、完全なフル充電は行わず、80%程度までの充電が一般的です。これ以上充電するとバッテリーに負荷がかかり、充電速度が遅くなります。
30分で約200~300kmの走行距離分を充電でき、40kWh~50kWhのバッテリーの場合、80%までの充電が30分~1時間程度で完了します。
充電時間に影響する要素
前章でも軽く解説しましたが、EVの充電時間には、充電方法やバッテリー容量が影響します。他にも、バッテリー残量や充電環境の温度も充電時間を左右します。
充電器の種類
充電時間は主に充電器の種類によって変わります。一般的な充電器は「レベル1(普通充電・100V)」「レベル2(普通充電・200V)」「急速充電」の3つに分類されます。レベル1(普通充電・100V)は、家庭用コンセントを利用する充電方法です。
充電速度は非常に遅く、1時間あたり約4~6kmの走行分を充電できます。バッテリーが完全に空の場合、フル充電に約20~50時間かかることがあり、少しずつ充電する場合や、バッテリー残量が減っていない場合に使用されます。
レベル2(普通充電・200V)は家庭用充電器または公共の普通充電ステーションで利用される充電器です。1時間あたり約15~40kmの走行分を充電できます。フル充電に6~12時間程度かかることが多く、一般的な家庭充電に最適な方法で、多くのケースは夜間充電の方法として採用されています。
レベル3(急速充電・CHAdeMOやCCS)は、高出力の公共急速充電ステーションを利用します。30分で約80%まで充電できる車種が多く、長距離移動時に利用されることが一般的です。80%までの急速充電は30~60分、フル充電にはそれ以上の充電時間がかかります。
バッテリー容量
車両のバッテリー容量も充電時間に大きな影響を与えます。バッテリー容量(kWh)が大きいほど、充電に時間がかかります。例えば、40kWhのバッテリーを搭載した車はレベル2充電器を使用する際8時間程度でフル充電できますが、100kWhのバッテリーを持つ車両はその倍の時間が必要です。
バッテリーの残量
充電開始時のバッテリー残量によっても、充電にかかる時間は異なります。バッテリーが空に近いほど、フル充電には時間がかかります。また、多くのEVは急速充電では80%まで充電する時間は短いものの、80%から100%までの充電には追加の時間が必要です。
充電環境の温度
バッテリーは温度の影響を受けやすく、特に極端な低温や高温では充電速度が遅くなることがあります。バッテリーが最適な温度範囲で充電されると、効率的に充電できますが、寒冷地や暑い環境では充電時間が長くなることがあります。
家庭での充電を最適化する方法
家庭での充電を最適化する最も効果的な方法は、200Vのレベル2充電器を設置することです。これにより、充電速度が大幅に速くなり、一晩でフル充電が可能になります。100Vコンセントによる充電よりも効率が良く、特に長距離運転が多い場合におすすめです。
また、多くの電力会社では、夜間の電力料金を割引するプランを提供しています。これを利用して、夜間にEVを充電することで、電気代を節約しながら充電を効率的におこなえます。
EVの充電器や車にタイマー機能が付いている場合、夜間の安い時間帯に自動で充電が始まるよう設定できます。EVの充電スケジュールを細かく管理し、必要に応じてこまめに充電することも有効です。
バッテリーを常に空にせず、80%程度を目安に充電しておくと、バッテリーの寿命を延ばすことにもつながります。また、長距離ドライブの前にはフル充電し、日常的な短距離走行ではこまめに充電すると良いでしょう。
もし家庭で太陽光発電を利用している場合、発電した電力をEVの充電に利用することで、コストを大幅に削減することも可能です。昼間に太陽光で発電した電力をそのままEVに充電できれば、電力網からの購入電力を減らせるためエコで経済的です。
さらに、スマートチャージングシステムやHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)など、車の充電に関するスマート管理システムを導入することも有効です。
電力の需要に応じて最適なタイミングでの充電が可能になります。再生可能エネルギーや安価な夜間電力を優先的に使うように自動調整してくれるため、効率的なエネルギー管理が可能です。
まとめ
EVの充電時間に焦点をあてて解説しました。EVの充電時間は、充電器の種類やバッテリー容量、充電環境によって異なります。家庭での充電を最適化するためには、200Vの専用充電設備の設置や夜間の充電を活用することが効果的です。また、太陽光発電システムやスマート管理システムを利用すれば、さらに効率的で経済的な運用が可能になります。充電時間を上手に管理することで、快適なEVライフを送れるでしょう。