
ガソリン価格の上昇や環境への意識の高まりにより、社用車や営業車のEV化に踏み切る企業が増えてきました。電気自動車にはコスト削減や企業イメージの向上といったメリットがある一方で、導入にあたっては事前に確認すべき注意点もあります。そこで本記事では、EV化のメリットと注意点を紹介していきます。
CONTENTS
社用車や営業車のEV化を進める前に理解しておくべき基本知識
社用車や営業車を電気自動車(EV)に切り替える企業が増えてきています。環境への配慮や企業イメージの向上などが理由ですが、導入にあたっては事前に知っておきたいポイントもあります。まずは、EV導入前に理解しておきたい基礎的な情報を理解しておきましょう。
自社に充電設備を設置する準備が必要
社用車や営業車をEVに切り替える場合、自社での充電設備の整備が必要になることがあります。これは日々の業務で安定して車両を使うために欠かせない準備です。
一般的には「普通充電器」や「急速充電器」を設置しますが、どちらを選ぶかは使用頻度や車両台数によって異なります。
なお、初期費用はかかりますが、国や自治体が提供する補助金制度を活用できる場合もあるので、あらかじめチェックしておきましょう。加えて、設備導入にかかる費用や設置スペースの確保、工事期間なども事前に確認しておくと安心です。
このようにEV化は、ただ車を入れ替えるだけではなく、それを支えるインフラ整備まで含めて計画する必要があります。
EVの充電方法を理解しておく
現在、日本ではEVの充電方法として主に「基礎充電」「経路充電」「目的地充電」の3種類があります。
「基礎充電」とは、社用車を保管している駐車場などで日常的に行う充電のことです。「経路充電」は高速道路のサービスエリアや道の駅などでの充電、「目的地充電」はホテルや商業施設などで目的地到着後に行うものです。
外出先で充電できるからといって、自社に設備を設けなくてよいと考えるのはやめましょう。安定して車を使うには「基礎充電」が基本とされており、自社内での充電環境を整えることが不可欠です。
日々の業務に支障をきたさないよう、社内での充電体制をしっかりと計画しておきましょう。
航続距離もきちんと確認しておく
EVは一回の充電でどれくらい走れるか、いわゆる「航続距離」が車種によって大きく異なります。
現在販売されているEVの航続距離は、200kmから600km程度までさまざまです。自社の社用車がどれだけの距離を1日に走行するかを把握し、それに見合う車種を選ぶ必要があります。
また、取引先の場所や営業ルートに充電施設があるかもあらかじめ確認しておくと安心です。加えて、航続距離だけでなく、冬場など外気温によるバッテリー性能の変化も頭に入れておくと、より現実的な運用計画が立てられます。
以上のことから、EVを導入する前に、走行距離と充電環境をセットで検討することが重要です。
社用車や営業車をEV化することで得られるさまざまなメリット
EV化は単なるトレンドではなく、企業活動において多くのメリットがあると注目されています。ここでは、社用車・営業車をEV化することで期待できる主なメリットについてご紹介します。
環境への配慮につながる
EVは走行時にCO2(二酸化炭素)を排出しないため、環境負荷の軽減に貢献できます。
ガソリン車やディーゼル車のように化石燃料を燃やさないため、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして効果が期待されています。
企業として環境配慮を意識した取り組みを進めることで、社会全体の持続可能な発展に一役買うことができるでしょう。
整備や点検にかかる手間が減る
ガソリン車の場合、オイル交換やエンジン周りの定期メンテナンスが必要ですが、EVはそうした部品の消耗が少なくなります。たとえば、エンジンオイルやフィルターの交換は基本的に不要です。
結果として、整備の頻度が減り、維持費も抑えられる可能性があります。日々の車両管理がラクになる点は見逃せません。
ガソリン代を抑えることができる
電気自動車は、同じ距離を走行した場合、ガソリン車に比べてかかるエネルギーコストが安くなる傾向があります。
会社に充電設備を設けて安定した充電環境が整えられれば、ガソリン車よりも大きくコストを抑えることが可能です。日常的に社用車を多く使う企業にとって、燃料費の差は大きなメリットとなります。
非常時には電源としても活用できる
一部の電気自動車には、蓄えた電力を外部に供給する機能があります。これにより、災害などで停電が起きた際に、照明や家電などの電源としてEVが役立つでしょう。非常時の備えとしても、社用車のEV化は一つの選択肢になります。
税金面での優遇がある
EVには、いくつかの税制上の優遇措置があります。たとえば「環境性能割」が非課税となっていたり、「エコカー減税」や「グリーン化特例」などの制度が用意されていたりと、車両導入時や保有期間中の税負担を軽減できる可能性があります。
企業イメージの向上につながる
EVの導入は、環境意識の高い企業としてのアピールにもなります。持続可能な社会の実現を目指す姿勢は、顧客や取引先からの信頼向上にもつながるでしょう。
また、ESG投資やサステナビリティに関心のある金融機関やパートナー企業との関係強化にも役立つ場合があります。
社用車や営業車をEVに切り替える前に知っておきたい注意点
EVには特有の課題や検討すべき点もあります。導入をスムーズに進めるためには、あらかじめ注意点を理解しておくことが大切です。ここでは、EV化にあたって確認しておきたいポイントをご紹介します。
導入時の初期費用が大きくなる
EVの車両価格は少しずつ下がってきていますが、まだガソリン車に比べて高めです。特に、バッテリー性能が高い車種ほど価格が上がることも多く、社用車に複数台導入する場合にはまとまった初期費用が必要になります。
また、社内での充電環境を整える場合にも設備費がかかります。普通充電器の設置には、機器代が1台あたり約30万円、工事費用も30〜40万円程度かかるのが一般的です。
急速充電器の場合はさらに高額で、機器代が200〜300万円、設置には電力契約や設備状況によって大きな差が出ます。事前に予算の見通しを立てておくことが重要です。
電力契約の見直しが必要になるケースも
EVの導入により、会社全体の電気使用量が増えることを想定しておきましょう。特に、同時に複数台のEVを充電するような運用を行うと、電力の最大需要量が高くなり、電力会社との契約内容を見直さなければならない場合があります。
契約電力が増えると、基本料金のアップにつながることもあるため、充電の時間帯をずらしたり、充電計画を立てたりといった工夫が必要になることもあります。EVを複数台運用する企業では、特に注意が必要なポイントです。
充電できる場所がまだ限られている
外出先で充電したいときに、すぐに充電ステーションが見つかるとは限りません。都市部では充電スポットが増えてきていますが、まだ数が十分とはいえず、地域によっては充電できる場所が少ないケースも多いです。
商業施設の駐車場やディーラーなどに設置されていることもありますが、営業時間や利用条件に制限がある場合もあります。そのため、出先での充電を前提にするのではなく、自社での充電体制を中心に考えることが求められます。
選べる車種がまだ多くない
EVは登場してまだそれほど時間が経っていないため、ガソリン車に比べて、選べる車種が限られています。特に、荷物をたくさん積む業務用バンや、大人数を乗せるワゴンタイプなど、用途に特化した車種はまだ数が少ないのが現状です。
また、価格や航続距離などのバランスも考慮する必要があり、希望に合うEVを見つけるには時間がかかることもあります。必要な条件を整理したうえで、車種をしっかり検討することが大切です。
まとめ
社用車や営業車のEV化には、基本的な知識を事前に理解し、自社の状況に合った導入計画を立てることが大切です。EVには環境面やコスト面などさまざまな利点がありますが、同時に導入時の費用や充電環境、車種の選択など、慎重に検討すべき点も少なくありません。利点と注意点の両面を正しく把握し、自社の業務スタイルに合った運用方法を見つけることで、よりスムーズなEV導入と運用が可能になります。